糖尿病やメタボリックシンドロームなどの持病をもった患者さんや健康に気をつけたい方に、安心して外食を楽しんでいただけるように開発したオリジナル外食メニューです。
糖尿病は、平成19年度の調査で20歳以上の日本人の約10%、890万人が罹患する国民病であり、増加の一途を辿っています。糖尿病やその合併症である糖尿病網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳血管障害は患者さんの生活の質を大きく損なうのみならず、医療経済の面からも大きな問題となってきています。このような糖尿病患者急増の原因として、生活習慣の急速な欧米化による運動不足や脂質摂取量の増加が深く関与しています。
熊本県においても、平成18年度の県民健康栄養調査では糖尿病推定患者数は14.1万人(20歳以上県民の9.6%)、予備群を含めると37.9万人(20歳以上県民の25.8% 図1)であり、全国の傾向と同様、糖尿病患者数の著しい増加を認めています。さらに、熊本県ではメタボリックシンドローム、血圧、脂質のリスク保有率も全国平均に比べ高くなっています(図2)。これらの原因として、熊本県では生活習慣病の原因となる肥満者が多い、食生活や運動習慣の是正が進んでいないといったこと(図3)が挙げられています。
これらの改善に食事療法は重要なことの1つです。しかしながら、健康食は味が薄くておいしくない、外食はおいしいがカロリーが高い、外食ではカロリーは減らせない、糖尿病や高血圧などがあると外食できないといった、一般的な偏見が根強いようです。このような状況を踏まえ、糖尿病などの持病をもった患者さんのみならず、体重管理が必要な方、腹囲が気になる方、健康に関心の高い方などが安心して食すことができるような、おいしくてカロリーの気にならない、しかも食べると健康増進が期待できる外食メニューの開発・普及が必要と考えられました(図4)。
今回、熊本大学大学院代謝内科学分野教授荒木栄一先生が会長として、平成25年5月に「第56回日本糖尿病学会年次学術集会」を熊本市で開催することになりました。本学会開催を契機としまして、熊本県における糖尿病の啓発活動をさらに展開することとなりました。
この啓発活動の1つとして、カロリーの気にならない外食メニューの開発と熊本県民への提供を、県内の飲食店オーナーやシェフに提案し御協力をお願い致しました。
私達は、『糖尿病対策』のシンボルであるブルーサークルを掲げ、健康的な外食メニューを「ブルーサークルメニュー」(ロゴ 図5)とし、熊本県内の飲食店やホテル等から広く募集しました。
ブルーサークルメニューの定義は、熊本県内の飲食店・弁当店・総菜店等が考案したオリジナル外食メニューで、総エネルギー量が600 kcal未満、塩分が3 g以下のランチメニュー、もしくはコースメニューです(図6)。これを厳格に評価するために、県栄養士会にご協力いただき候補作品の厳正なカロリー・塩分計算を行っていただきました。これらの過程を経て認定された作品 (メニュー)は、熊本県のご協力により熊本県の事業の1つである「健康づくり応援店」として指定されます。このブルーサークルメニューを県民の皆様に広く知って頂くために、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌・タウン誌、熊本大学代謝内科学HP、第56回糖尿病学会年次学術集会HP、県栄養士会HP等で広報することとしました。(ブルーサークルメニュー選定・認定までの流れと、選定するブルーサークルメニュー認定委員会のメンバーはこちら(図7、図8)。)
このブルーサークルメニューは、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの持病をもった患者さんや健康に気をつけたい方に、安心して外食を楽しんで頂けるように開発したものです。血糖値が上がったり、体重が増えたりするのを心配しながら外食していた方も、心から外食を楽しめ、熊本における生活の質が改善することにつながることを願っております。さらには、ブルーサークルメニューを介して県民の皆様の健康や幸福への貢献ができればこれ以上の喜びはないと考えております。
皆さん、ぜひ一度県内のシェフが知恵と腕をふるった、美味しいブルーサークルメニューをお試しください。